部活動問題を鋭意取材中です。
現在、中学校の部活動問題について、取材中です。
この問題、ものすごくおもしろいです。
発売前なので、詳細はまだ書けませんが、
ただひとついえることは、その根本にあるのは「少子化」だということです。
例えば、10年前に500人生徒がいた中学校が、今は300人になっているのです。
マイナス200人。
それに伴って学校に配属される先生の数が減り、先生たちがこんなに忙しくなってしまったわけです。
もう、サッカーや野球は、一校では部活ができなくなりつつあります。
どこの学校も、規模が縮小し、これまでのやり方では維持できなくなっているのです。
このように、今は少子化の影響が、学校に顕著に出てきていますが、今後社会のあちこちに出てくることになるでしょう。
つまりですね、我々はダウンサイジングする社会に直面しているということです。
「こういうの、あったらいいですよね」と選択肢を増やしてきた社会から、「人がいないからこれはできない。廃止しよう」「次は何をやめようか」と、選択肢を減らしていく社会へ突入してしまったのですよ。
人々の欲望をどんどん具現化できる時代から、あきらめ、我慢する時代へ。
そして、どうしても叶えたい願いがあるのなら、行政や学校に頼っても無駄で、自分で動くしかない時代……。
だから、今この国がもっとも力を入れなくてはいけないのは、少子化対策なんだと思います。
そういう意味では、東京都が待機児童対策にお金をつぎこんでいるのは、間違いじゃないってことです。
総合教育技術2017年8月号が発売されました!
私が執筆しました「総合教育技術」8月号が発売されました。
今回は「『チーム学校』を築く情報発信力!」の部分を担当しました。
学校のホームページを、何年も放置している学校が全国にたくさんあります。校長先生が誰なのかわからないホームページもたくさんあります。
どういうわけだか多くの学校は、いろんなことを隠したがるのです。
でも、それはもったいないことです。
ホームページを戦略的に使って、学校経営にプラスの効果をもたらしている学校があるのです。
ただし、いいことばかり紹介してもダメなようです。
これからはよくないところもどんどん見せていかないと……。
保護者や地域の方に協力してもらいたいのなら、ホームページで情報を発信して、まずは学校のことをもっと知ってもらいましょう、というお話です。
教員を大量採用すると、かえって忙しくなるらしい。
あるサイトで、私がお会いしたことのあるイケメン先生の記事を読みました。
「人手不足だからといって教員を大量採用すると、かえって忙しくなる」と。
その理由は、大量採用により、本来、教員にならないような人、つまり、本気で教員になりたいわけじゃない人、能力が劣っている人も教員になれてしまって、質が落ちてしまうから……。実際に大量採用した自治体では、荒れたクラスが増えてしまったんだそうですよ。
そうすると、周りのベテラン先生たちがいろいろフォローしないといけないですからね。確かに忙しくなりますね。
おっしゃる通りです。
しかしですね。ここで終わらせず、ちょっと考えてみていただきたいのです。
今のまま教員の長時間労働を放置すると、どうなるでしょう。
今や教員がブラック職業だということは、国民のほとんどが知っていますよ。
その結果どうなるかというと……現実的な人は教員を避けますよね。優秀な人が教員という職業を選ばなくなります。
大量採用しなくたって、このままいくと、質は落ちていくでしょう。
そういう意味では、この国の教育は今ものすごく危機に直面していると思うんですよ。
長時間労働を改善するためには、人を増やすか、仕事量を減らすか、そのどちらかをする必要があります。
人を増やすことでかえって現場の先生が忙しくなるというのなら、とりあえず、今すぐにでも、仕事を減らすことに着手すべきだということですね。
道徳の教科化でいじめは防げるのか?
小学校では2018(平成30)年度から、中学校では2019(
現在、道徳の時間は……行事などにより、つぶされていたりします。成績をつけないから、優先順位が下なのです。
「道徳をちゃんと教えないから、いじめが起こるんだよ」と思う方もいるかもしれませんが、授業をすればいいってものではないと思います。
一般に、道徳の授業には教則本などを使い、「いい話」を読むわけですが、授業の中で「こういうとき、あなたならどうしますか?」と先生から聞かれて、いかに自分が善人であるか、模範的であるかをアピールし合うかのような、そういう授業になる可能性があるからです。
大人が求めている答えを、子どもはわかっていて、それを言うわけです。
子どもはいじめがいけないことだと、ちゃんと知っています。授業で先生からきかれたら、「いじめはいけない」と答えるでしょう。それでもいじめをしたり、加担したりしてしまうことがあります。
授業は授業、現実は現実、で分けて考えているからです。
以前、道徳で素晴らしい実践をしている先生を取材したことがあります。練りに練ったオリジナルの授業はおもしろくて、同時に子どもたちに本気で考えさせます。
そういう先生も、いるところにはいます。それは知っています。
でも、多くの先生はそんなに授業の準備に時間がかけられないのではないかと思います。
ですから、このままですと、教則本を読んで話し合う、というパターンになってしまうんだと思います……。
それならいっそ、首都大学東京の木村草太教授がおっしゃるように、法律を教えたほうがいじめの抑止効果があるのではないかと思います。
いじめという言葉の中には、脅迫、恐喝、暴行、傷害、強盗などが入っていること、いじめを行うと、どんな罪になり、警察はどう対応し、加害者にはどんなことが待っているか……などを教えたほうが、少なくとも事の重大さに気づけるのではないでしょうか。
いじめをなくす授業とは? 「木原雅子さんの出張授業」から学ぶこと
「学校でいじめがあった」と報道されると、世間の多くの方は、「学校はいじめの授業をすればいいじゃないか」と思うのではないでしょうか。
私もかつてはそうでした。
「いじめはいけない、と授業でちゃんと教えないからいじめが起こるんだろう」と。
でも、「いじめの授業をしても、いじめはなくならない」そうですよ。
むしろ、唐突にいじめの授業などしますと、教室の中は「誰が先生にチクッたんだ」と険悪なムードになるとか。
じゃあ、どんな授業をしたらいいのかといいますと……、
昨晩Eテレでやってた、「木原雅子さんの出張授業」です。
ある中学校の、荒れているクラスが再生していくドキュメンタリーです。
最初のころは、みんな、いつ自分がいじめの標的にされるかもしれないと、びくびくしています。先生に協力的な発言をすれば、それだけでいじめられるかもしれない……。だから、先生を共通の敵にして、暴言を吐き、悪い意味で結束していた、そんな感じでしょうか。こういうクラスでは、お互いに足を引っ張り合う感じで前向きなことは言えませんよね。放置すれば、どんどん荒んでいくだけです。
京都大学の医学博士である木原雅子さんは、一人一人の声に丁寧に耳を傾け、クラスを「お互いの考えの違いを認め合って、どんな発言しても、受け容れてもらえる雰囲気」に変えていくのです。
それにより、中学生たちは自分の良い面を出せるようになり、前向きな希望を持って日々を過ごせるようになります……。
それにしても、NHKのドキュメンタリーは本当にすごいです。きっと撮影のスタッフさんたちは、莫大な時間を子どもたちと一緒に過ごしたんだと思います。でないと、カメラの前で、本音を話せるようにはなりませんからね……。
やっぱり、お金と人の確保ができるNHKだからこそ、できることだと思います。
番組の中で校長先生が、「今までこんな接し方をしたことがない」的なことをおっしゃってましたが……、校長先生も担任の先生も、学年の先生も、悪気はないんだと思います。
ただ、昔のやり方が通じなくなっていることに気づくのが遅かったんでしょう。
もちろん、一回だけ素晴らしい授業をしても、荒れたクラスが変わるわけではありません。
番組でも、まずは子どもたちの自己肯定感を高めることから始めました。子どもたちは、自分もやればできること、自分のことを見ていてくれて、良さをわかってくれる大人がいることを知っていくのです。自分が他者に受け容れてもらえると、他者を受け容れる余裕ができます。そうやって、クラスのみんなが他者に対してやわらかい雰囲気になったところで、「お互いの意見を聞き合い、認め合える授業」です。
木原さんの場合、内容は性教育でしたが、週1回ぐらい、誰もが当事者になって考え、みんなの意見を聞き合う時間があるといいんじゃないでしょうか。授業ではなくて、学活でもいいと思うんです。もちろん、クラス会議でも。
そして、もっと多くの学校で、こういう取り組みを、時間をかけてしてもらえればなと思う次第です。それがいじめをなくすことにつながると思うんですよ。
教職課程で学生に何を教えるべきなのか。
現在、教員志望の学生が大学で学ぶ内容を変えよう、という動きがあり、先月、「教職課程コアカリキュラム」案が公表されました。
もうパブリック・コメントはしめきられてしまったので残念なんですけど…。
私が常々、教職課程で教えればいいのに、と思っていたことは3つあります。
1学級経営のやりかた
これはものすごく肝心なことなのに、今まで大学では教えていなかったのです。教科の指導方法が中心でした。良い授業をするために、教科の指導方法を学ぶことは大切ですけど、学級経営がうまくいっていないと、先生の指導が子どもに入っていきません。そういうもののようです。良い授業をするための前提として、どうやったら学級経営がうまくいくのか、その方法を学ぶことはものすごく重要なことです。
2要支援の児童生徒への対応
発達障害の児童生徒の数が20年前、30年前に比べると増えている、というのが現場の感覚です。しかし、どう対応したらいいのか、大学では教えてきませんでした。その結果、自分で勉強した人はよくわかっているし、勉強しない人は全然わかっていない、という状況になっています。教員によって理解度の差が大きいのです。若手で勉強した人のほうが、ベテランで勉強しない人よりも詳しかったりします。
要支援の児童生徒に、適切な対応してあげてほしいですよね。それをしないと、クラスの中でみんなの邪魔をする悪者になってしまいます。
この点に関しては、新しいカリキュラムにちゃんと入りそうです。
3アンガーマネジメント
以前に、このテーマで取材したことがあり、とても必要だと感じたのです。
教員は聖人君子ではありません。学校は人間と人間がぶつかり合う場所ですから、きれいごとではすみません。いつもニコニコ、みんなから好かれる「いい人」ではいられないことだってあります。
しかも、教員は「こうあるべきだ」という考え方が強めの人が多いそうです。そういう「〇〇するべきだ」は、物事を正したりするのに必要ではあります。掃除の時間にさぼっている子がいて、「なんでもいいよ~」「まぁ、いいか」なんていっていたら、収拾がつかなくなるからです。きちんと「こうするべき」「こうしなさい」とたださないといけない仕事です。
ただ、「べきだ」が強い人の場合、何度言っても従わない人に対して怒りを感じやすくなります。保護者の理不尽な行動、子どもの態度にカチンとくることが当然、あるでしょう。
教員が、何をやりだすかわからない子どもたちを前にして、怒らないほうが無理なのです。
怒ると血圧があがりますし、いつも怒っている人は眉間にしわが寄り、顔が「怒ってるような顔」になっています。そして、そういう人には怒るようなことが後から後から起きてくるのですよ。
本当は怒りたくなくても、人間ですから自分の中に湧き上がってくる怒りの感情を止めることはできません。その感情をどう処理すればいいのか、対処方法を知っておけば、教員たちが少しは心穏やかに過ごせる気がします。
さすがに3は、教職課程には入らないかな、という気がしますが、関連書籍を読むだけでもかなり勉強になりますよ。先生たちにおすすめしたいです。
学校業務改善アドバイザーさんとの会話から日本の教育の縮図を見た
今年の春から、文科省は学校業務改善アドバイザーを学校の派遣する事業を始めました。学校の業務改善を手助けするためです。学校業務改善アドバイザーは、各方面から専門家が集められた模様です。
本日、学校業務改善アドバイザーのお一人とお話をする機会がありました。
その方によりますと、第一回目の会合は、各アドバイザーさんがご自分の専門分野を語ったそうです。
でも、その方は「全体のバランスを考える人がいない」と感じたそうです。
学校事務の業務改善が得意な人は、そこだけで業務改善しようとするわけです。
文科省はひとつの学校に何人も同時に派遣するわけではありませんから、一人で学校へ派遣されて、自分の専門分野だけ業務改善してくるのでしょう。
それも、それなりの効果があるとは思います。
ですが、それはかなりいびつではないでしょうか。ある部分だけスマートにするけど、ある部分は手つかずのまま残るわけです。
本当は、学校全体を見て、いろんな部分の業務をバランスよくサイズダウンしたほうがいい気がします。
そして、これは日本の教育全体にもあてはまることです。
例えば、学習指導料を改訂するとなれば、専門部会を作って、専門家たちがその分野に関してだけ議論を深めます。
子どもたちのために、どう改良するかを考え、追究していきます。
それは一見よいことですが、誰も全体を見ていないんですよね。
つまり、教員の労働力のキャパシティというものを考えていないからこそ、これまで仕事が増え続けてきたのだと思います。
一日は24時間しかなく、教員の勤務時間は決まっているのです。その中で配分できる仕事量というものを考えて、議論を進めてほしいなと私は思うんです。
中教審の専門部会にこそ、学校業務改善アドバイザーが出席する必要があると思います。