日本の教育を考える

日本の教育が少しでも良い方向に進化していってほしいなと願いつつ、感じたことを書いてみます。

全国で学校閉庁日、校長先生は夏休み

全国的に、お盆休みの現在、多くの小中学校が「お休み」となっているようです。

お盆休みに合わせて学校閉庁日を設定する自治体が増えているからです。

以前は、お盆であろうと関係なく、学校には常に誰か先生がいて不測の事態に備えていました。先生が部活動の指導をしていることもありました。

それが当たり前になっていたのです。

 

ここ数年、夏休み中の何日間かを学校閉庁日にする自治体がぽつぽつと増えてきていたのですが、教員の長時間労働をなんとかしようという動きを受けて、今年は本当に多くの学校が夏休み中に学校閉庁日を作っています(その間に何かあったら、教育委員会が対応するそうです)。

それに伴って、普段、なかなか休めない校長先生の中には、8月11日から20日まで、夏休みをとっている方も多いようです。

なぜそう思うのかというと、先週、京都の小学校と東京の中学校に取材を申し込んだところ、2校とも、校長先生が夏休みをとるため「21日以降でないと無理」といわれてししまったからです……。

校長先生が10日間も、堂々と、休めるようになったのは、大きな前進です。

これも教員の長時間労働の実態が、世間の人に知れ渡った効果でしょう。

教育委員会もちゃんと考えてくれています。

 

私個人としては、取材が遅くなると、取材からしめきりまでの期間が短くなってしまうので少々困るのですが……喜ぶことにします。

カリマネと民主主義の関係

カリキュラムマネジメントとは新学習指導要領の目玉のひとつです。

私はある雑誌の記事を書くため、研究者に取材しました。

カリキュラムマネジメントとは、ものすごく簡単に言うと、教科書会社が考えたカリキュラム通りに教えるのではなく、その学校の子どもの実態、地域の実情にあったカリキュラムを、すべての先生たちが当事者意識を持ち、みんなで考え、話し合って決めましょう、という主旨のようです。

これはその通りです。何の異論もございません。学校の実態に合わせて教えたほうがいいに決まっています。

 

しかしですね、教員の多忙化縮減には逆行します。

カリマネを民主的に決めようとすればするほど、全校の教員たちが一堂に集まり、じっくり話し合うための多くの時間が必要になるからです。それぞれの意見を出し合い、合意を形成していくには莫大な時間がかかることは容易に想像できます。

このような進め方をすると、もしもうまくいかなかったとき、誰の責任かわからなくなるというメリットがあります。そういう意味では、学校だけでなく、多くの企業でもよく行われていることだといえます。

 

これに対し、校長と教頭などの管理職がカリキュラムを考え、「これやってください」と言ったほうが、どんなに時間がかからず、スピーディーに事が進むか……。

 

といいつつ、

カリマネに関しては、民主的でいいのかな、という気がします。授業は先生の本業であり、各人にとって、これは譲れない部分だと思われるからです。

ただ、学校で起こるすべてのことが、なんでもかんでも民主的である必要はないと思います。

例えば、事務作業的なことに関しては、会議などにかけないで、管理職がサクッと決めていいことにして、授業の内容に関することだけは民主的に進めるとか、線引きをすることが重要な気がします。

学習指導要領をもっと読みやすくしてほしい。

教育関係者でない人から、「学習指導要領ってなんですか」と聞かれることがあります。

知らないですよね、普通。

私もこの仕事を始める前は知りませんでした。

ものすごく簡単に言うと、各教科ごとに、どの内容を何年生に教えましょう、と文部科学省が決めたものです。これがあるおかげで、公立の学校では、足並みをそろえて指導できるのです。とても大事で、なくてはならないものです。教員にとってはバイブルだといえます。

10年に一度改訂されることになっていて、小学校は2020年から、中学校は2021年から新しいものが実施されます。その新しい学習指導要領が、今年3月に公示されました。

そのため、今、教育界は新学習指導要領ネタで盛り上がっています。こんなこと書いてあるけど、どうやって教えるんだ、みたいな話です。

 

新学習指導要領に書いてあることで、私が「ほんとかよ」とつっこみを入れたくなったことがあります。

それは、「新学習指導要領を一家に一冊用意して、みんなで読みましょう。子どもも読んで、学びの地図にしましょう」的なことが書いてある部分です。

ハッキリ言って、学習指導要領というのは、ものすごく読みにくいんですよ。

なんでかというと、最初から最後までずっと、ドアップでものを見せられているような気分になるからです。書いてあることが全部大事。でも、そんなに人間の集中力は続くものではありません。目で追ってるだけで疲れます。

しかも、教育用語のオンパレードですから、途中でうんざりするでしょう。

多分、普通の大人が読んだら、すぐ眠くなります。そういう意味では寝る前に読むと役に立ちそうではありますが。

多くの国民に読んでほしいのでしたら、少しは緩急をつけて、もっと読みやすくしていただきたいな~と私は思うわけです。

学校のプール開放時の事故を防ぐには。

三重県四日市市の小学校で、低学年用プールにいた3年生の男子児童が溺れているのを監視していた保護者が見つけました。市内の病院に搬送されましたが、搬送時に意識はなく、集中治療室(ICU)に入っているそうです。

 プールは長さ25m×幅13mで、低学年用の水深は約60㎝。プールには計約60人の児童がいて、保護者ら7人が監視していました。プールの開放は市教委がPTAに委託して実施しています。

 

まず、この男子児童が、早く回復することを願っています。

 

教員の多忙解消という意味でも、PTAに「委託」すること自体は悪いことではないと思います。教員は立ち会わないで、保護者がプールの監視を行っている学校は、他にもあるはずです。

夏休み中、どこにも旅行に行けない子もいます。

「プールは危険だから中止」にしてしまったら、夏休みの楽しみがなくなってしまいます。できたらプール開放は存続していただきたい気がします。

しかし、このような事故が起きてしまうと、なんらかの対策を考えないといけないでしょう。

 

私が思い付く対策は、3つです。

対策1 教員にプールの監視をお願いする。市教委としては簡単で安上がりですが、教員の負担軽減という流れから遠ざかります。プール開放の回数を減らす、という条件つきならばいいかもしれません。

対策2 外部からプール監視員を雇うのです。公営のプールなどでは、大学生の監視員がアルバイトしているわけですから、そのような、人命救助の研修を受けた人たちを配置するのです。監視員の人件費は、PTA会費から払ってもらえば、いいように思います。

対策4 PTA、地域の人の有志に市の研修を受けてもらい、プール監視員に認定します。たとえば、6人で監視するとしたら、このプール監視員が必ず毎回1人はつくようにし、他は一般の保護者でOK。見ているだけなら誰でもできますが、いざというときの対応は、専門的に学んでいないとできないと思うからです。「自分たちの子どもは、自分たちで守る」という発想は大事だと思います。

第6回「教育と笑いの会」に行ってきました。

土曜日は、第6回「教育と笑いの会」に出かけ、たくさん笑ってまいりました。

会長は岐阜聖徳学園大学教授で、元中学校校長の玉置崇先生です。玉置先生の趣味が落語だとはうかがっておりましたが、落語を話される場面を見るのは初めてでした。

最初の会長あいさつから、笑いをとっていかれました。

 

そして、授業名人の野口芳宏先生にも久しぶりにお目にかかりました。80歳をすでに超えていらっしゃいますが、弁舌が冴え、相変わらずパワフルです。

 

野中信行先生の話もおもしろかったです。新学期の出会いの3日間に何をするかを、おもしろおかしく話してくださって、先生をしているような方は表情が豊かで、声も通るんだなということを再確認しました。

 

それから、プロの落語家さんが二人、落語を披露してくださったんですけど……聞いていて、こういう楽しみ方を忘れていたと気付きました。

だって、日ごろ、感動するものといえば、目で見えるものが多いですよね。

いい景色も、テレビも漫画も。映画も。絵画も写真も。

でも、落語って、落語家さんの言葉やしぐさから想像しなくちゃいけないんです。

女郎さんがいてとか、部屋で今何をしていて……とか。

なんて高度な娯楽でしょう。

普段使わない脳をフル回転させた気がします。

 

この会にはシンポジウムもありました。いろいろな話が出たんですが、印象に残ったのは「人間は師匠を持つことが大事」ということです。

師匠がいれば、この人に迷惑をかけたくないとの思いがでてきて、無茶をしなくなります。なるほどな~と思いました。

 

「一時間の授業で一度も笑わせられなかった教員は、逮捕する!」

これは故有田先生の有名なお言葉です。

学校には笑いが必要ですよね。

先生たちには、子どもをいっぱい笑わせてあげて欲しいなと思ってしまいました。

「窓から飛び降りろ」はダメ! 暴言を防ぐ対策は?

所沢市の小学校で、40代の男性教師が、鉛筆削りの貸し借りを巡って言い争っていた小学4年の男子児童に、「今すぐ窓から飛び降りろ」「命が惜しいのか。早く飛び降りろ」などと3階の教室から飛び降りるよう何度も迫ったんだとか。

まず、この男子児童が、このことを大人に言えて、よかったです。こんなことを言われたら、学校には行きたくないですよね。怖くて。

想像してみてください。

40代の大人の男性が、10歳の子どもに対してこんな言葉を投げつけなきゃならない状況を……。

おそらく、このクラスは制御不能になってたんじゃないかと思われます。

「やめなさい」ぐらいでは効果がないから、どんどんきついことを言うようになったのでしょう。

 

男性教師と男子児童がどういう人物なのかは、情報がないのでわかりませんから、どっちが悪いとか、そういう話は横に置いて。

(男性教師にストレスがたまってたのなら、解消する方法をご自身で考えてもらったほうがいいですし。)

 

このような事態を防ぐにはどんなシステムが必要かを考えてみます。

 

今後、このようなことがないようにするにはどうすればいいかというと……クラスに担任が一人じゃ足りないということでしょう。

クラス担任はふたり。

曜日で交代とか。

あるいは、学年に一人、全クラスに入る先生というのをつくって、日替わりで各クラスで過ごすとか。

あと、これは先生たちが嫌がるでしょうけど、教員OBOGがいつでも授業を見にきていいことにするとか。60歳で退職されたばかりの先生たちは、みなさん元気ですからね。気軽に学校にきてもらっては、いかがでしょう。あくまでも、学校経営に余計な口出しはしないという約束で。

 

もしもこの男性教師の他に、もう一人大人がクラスにいたら、男性教師にブレーキがかかったんじゃないかと思うんですよ。

担任が絶対的な王様に君臨してしまうから、ノーチェックでひどいことが行われてしまい、どんどんエスカレートしてしまうのです。

教室のドアをつねにオープンにして、風通しをよくするのは大事なことでしょう。

 

どの学校でも、校長先生や教頭先生が日常的に校内を回って、授業観察をしておりますが、全クラスを見てまわるわけですからね。1クラスを見ている時間は短いのです。このクラスはやばいなと、なんとなく雰囲気はわかっても、さすがに管理職がいたら、教師も言葉を慎みますよね。暴言の現場をおさえることは困難です。

やっぱり、クラスに日常的に複数の大人が入ったほうがいいと思うんですよ。

それには……教員の数を増やしてほしいですけど、それが無理なら、教員OBに協力を求めたらいかがでしょうか。

部活動問題を鋭意取材中です。

現在、中学校の部活動問題について、取材中です。

この問題、ものすごくおもしろいです。

発売前なので、詳細はまだ書けませんが、

ただひとついえることは、その根本にあるのは「少子化」だということです。

 

例えば、10年前に500人生徒がいた中学校が、今は300人になっているのです。

マイナス200人。

それに伴って学校に配属される先生の数が減り、先生たちがこんなに忙しくなってしまったわけです。

もう、サッカーや野球は、一校では部活ができなくなりつつあります。

どこの学校も、規模が縮小し、これまでのやり方では維持できなくなっているのです。

 

このように、今は少子化の影響が、学校に顕著に出てきていますが、今後社会のあちこちに出てくることになるでしょう。

 

つまりですね、我々はダウンサイジングする社会に直面しているということです。

 

「こういうの、あったらいいですよね」と選択肢を増やしてきた社会から、「人がいないからこれはできない。廃止しよう」「次は何をやめようか」と、選択肢を減らしていく社会へ突入してしまったのですよ。

人々の欲望をどんどん具現化できる時代から、あきらめ、我慢する時代へ。

そして、どうしても叶えたい願いがあるのなら、行政や学校に頼っても無駄で、自分で動くしかない時代……。

 

だから、今この国がもっとも力を入れなくてはいけないのは、少子化対策なんだと思います。

そういう意味では、東京都が待機児童対策にお金をつぎこんでいるのは、間違いじゃないってことです。