日本の教育を考える

日本の教育が少しでも良い方向に進化していってほしいなと願いつつ、感じたことを書いてみます。

教員におすすめ『幸せになる勇気』

『幸せになる勇気』(岸見一郎、古賀史健著、ダイヤモンド社)を読みました。

この本は、『嫌われる勇気』の後のお話です。青年は教師になり、アドラーの教えである、「ほめない、叱らない」をクラスで実践したところ、荒れてしまい、再び哲人のもとをたずねる、というところから始まります。

タイトルだけ見ると、世の中の多くの人が幸せになるためのノウハウ本なのかな、という気がしないでもないですが…、この本を読んで、一番得るものが大きいのは、若手教員だろうと思います。

もちろん、学級経営がうまく行っている先生には不用だと思いますよ。

そうじゃなくて、自分は頑張っているのに、常に問題行動を起こす子どもがいて、クラスが落ち着かなくて、困っている若い先生たちは、読んでみる価値があるんじゃないでしょうか。

 

物語は哲人と青年の対話という形で進んでいきます。

青年の血気盛んな、すぐかっとなる態度は、痛快です。普通はあそこまでストレートに、失礼なことを言えませんからね。そこがこの本のおもしろいところです。

でも、青年はじつにいいところをついていると思います。

 

私は以前、アドラー心理学を学校経営に取り入れている小学校に取材にいったことがあります。その時、ある若い女性教員から、「問題行動を起こす児童に振り回されて困っていたけど、アドラー心理学を知って救われた」という話を聞いたのです。一人の問題行動を起こす児童がいて、その子に先生が対応していると、他の子どももどんどん荒れてくるという悪循環にはまっていたそうなんですが、その女性教員を救ったのは、まさにこの本にでてくる「問題行動の5つの段階」です。これを知ってるのと知らないのでは、対応が変わってくると思うんですよ。

ただし、この本では、その先、実際に教室で子どもにどうしなさい、とまでは書いてないんですよ。そこは自分で考えなさいということなんでしょう。

 

哲人は青年に、大事なのは子どもへの「尊敬」だというのです。

それで思い出したのは、以前、「学びの共同体」の授業を見せてもらったときのことです。確か小学4年生の国語の授業だったと思うんですけど、クラスがとてもしっとりとして、落ち着いていました。 私が取材に行くぐらいですから、ものすごくいいクラスですけどね。先生は、子どものつぶやきを拾って、ひとつひとつ大事にします。たとえ少々的外れの発言であっても。クラスの子どもたちは授業に集中しています。友達の話をよく聞いて、そして、自分も発言し、思いを書き…そんなクラスでした。一言でいうなら、大人っぽいんですよ。

だから、「尊敬」されると、もしかしたら、子どもはこんなふうになるのかな、と私はイメージしながら読んでいました。

 

おそらく、読む人によって、この本を読んでピンとくる箇所はちがうんじゃないかと思います。私にも、個人的に「愛」に関して、イタタタと感じる部分が多々ありましたし。

 

アドラー心理学の「ほめない、叱らない」に関しては、青年は勘違いしていたことに気づきます。キーワードは「自立」です。そこまで考えて子どもに接しないといけない、ということなんですね。

 

アドラー心理学を左翼的だと言う人もいます。個人を尊重する心理学ですからね。学校教育にふさわしくないんじゃないかと…。その発想も理解できます。だから、すべての教員にはすすめません。

でも、もしも今現在、クラスの雰囲気がよくない、問題行動をする子供に手を焼いている先生がおられましたら、読んでみる価値はあると思います。自分が変わるためのヒントになるんじゃないかと思います。