日本の教育を考える

日本の教育が少しでも良い方向に進化していってほしいなと願いつつ、感じたことを書いてみます。

日大アメフト部悪質タックル問題がこれほど騒がれる理由

日大アメフト部の悪質タックル問題関連のニュースが、連日、配信され続けています。

おそらく10年前に同様の事が起こっても、これほど大問題にはならなかったはずです。

この問題がなぜこれほどまで、注目されるのかを考えてみました。

 

理由は三つあります。

①映像の存在とネットの普及

「インカムを落とし、それを拾っていたので反則プレイは見ていませんでした」という言い訳が、昔だったら通じたでしょう。しかし、今は映像を検証すれば「うそ」と判定されてしまいます。

そう、世の中は大きく変わったのです。今はどこの駅にも、防犯カメラが設置されている時代です。そして、警察もテレビ局に防犯カメラの映像を積極的に提供していますし、犯罪捜査に役立てています。一般市民もスマホを持ち歩き、隙あらば衝撃映像を撮影しようとしています。そして、それをネットを通じて簡単に拡散できる時代なのです。

前監督は、このような時代の変化に気づいていなかったのでしょう。

ご本人にしてみれば、何がいけないのか、わからないんじゃないでしょうか。だって、昔は口で適当に言っておけば、簡単にミスをごまかせたんですから。しかし、結果として、「うそ」をついたとされる記者会見の映像が連日、テレビで放送され続けることになってしまいました……。

今回の騒動のきっかけは、悪質タックルの映像が拡散されたことです。「これはひどいだろう」ということで共感を呼んだおかげで、うやむやにされなかったわけです。

インターネットの普及には、良い面と悪い面(個人情報の漏洩とか)があるとは思うんですが、今回は、良い面が出たように私は思っています。

 

②利害関係者が多い(今風にいうと、ステークホルダーですね)

・現役の日本大学の学生

公式サイトによりますと、日本大学の学生数は、74,712人だそうです(平成29年5月1日現在)。

日本大学のOB・OG

公式サイトに「平成21年に120周年を迎えた」と書いてありました。今は平成30年ですから、もうすぐ130周年になるわけです。卒業生の中にはお亡くなりになってる方もいるはずですが、OB・OGは100万人はいるんじゃないでしょうか。

・付属校の児童生徒と家族、卒業生

日本大学には、付属高校、中等教育学校、付属中学校、小学校、幼稚園、認定こども園、専門学校があります。付属高校を数えたら、23ありました。

これらの学校に通う児童生徒に加え、その家族、卒業生も関係者です。

・全国の受験生

日本大学への受験を考える高校生にとっては、今後改革を進めるのか進めないのか、気になります。

・大学でアメフトをしている人たち、そのOBたち。

あんな反則プレイを許してはいけない、と思っているはずです。

・全国で部活動をしている中学生、高校生と、その家族。この人たちは、大学の運動部の在り方、指導者の在り方に当然、関心があります。大学が、学生を守らないどころか、責任を押し付ける姿はショックですから。

 

ここまでくると、国民の3分の1ぐらいにはなるんじゃないでしょうか。みんな関係者です。

もっと薄い関係者もいます。

・大学時代に運動部にいた人。

昔はこうだった…などと言いたくなるはずです。

・組織の権力抗争が好きな人。

誰々の裏の顔とか、裏人脈とか、そういうのを好きな人もいるでしょう。

 

つまり、この問題に対して、何か言ってやりたくて、情報を収集している人は、たくさんいて、今や、多くの国民の共通の話題となっているのです。

 

今年3月、レスリング協会でパワハラ事件がありました。あの事件も相当話題になりましたが、利害関係者が日大ほど多くはありませんでした。大学の女子レスリング部の生徒と保護者、「パワハラ」に関心のある世間の人々、レスリング協会の人々、中学校・高校でレスリングをしている女子生徒たち、でしょうか。規模がずっと小さかったように思います。

③学校と社会がつながった

学校と社会は、ほんの10年前までは完全に分離されていました。校内で何が起こっていても、外の人は知りようがなかったからです。

しかし、①にも関連しますが、今は誰もが情報発信できる時代になり、ここ数年で一気に学校と社会はつながりました。

社会で起きたことが、学校に影響を及ぼしますし(働き方改革とか)、反対に、学校で起きたことが外に出るようになりました(良い面も、悪い面も)。

以前は、学校は「学校の常識」でことを運ぼうとする傾向が強かったのですが、最近は事件が起きれば、すぐに保護者会を開催して、事情を説明します。世間の常識を意識して対応することが学校には求められるようになりました。その結果、ちゃんとした校長先生はそのことを理解し、時代に合わせてしっかり動いています(個人差があります……)。学校は世間から厳しい目で見られがちです。不祥事のたびに叩かれながら、長い時間をかけて学んできたのです。

と、ここまで書いたのは、公立の小中学校の話です。

 

これに対し、大学は、いまだ独裁が可能な状態にあるということが、今回の騒動で明らかになりました。

しかし、みんなが「それ、おかしいんじゃない」と言いやすい時代に変わってきています。

そして、この流れは止められないのです。

なぜなら、小学校は2020年から、中学校では2021年から新学習指導要領が全面実施となります。この新学習指導要領が育成しようとしているのは、平たくいいますと、「おかしいものはおかしいと、はっきり主張できる子ども」なのです。

特に教育機関は厳しい目で見られます。

他の私立学校も、他者の意見を聞かないでトップが好き放題、やりたい放題をしていると、今後、何か小さなことがきっかけで、それが明るみに出て、非難にさらされる可能性が高いのではないでしょうか。

 

時代の転換期にきています。

日本大学は未来に向けて、どう舵を切るのか、注目したいと思います。