日本の子供の学力はなぜ低下したのか。
2025年7月、日本の子供の学力が低下した!というショッキングなニュースが飛び込んできました。
文部科学省は小学6年と中学3年を対象に毎年、全国学力・学習状況調査(全国学テと呼ばれるもの)を実施しています。これはあくまでも「調査」なので、毎年問題が違います。この学年の子供たちが、この単元をどのぐらい理解しているかがわかるものであり、この結果を生かして教え方を工夫しましょう、という主旨のものです。中学校の国語では、記述式の平均正答率は3割に届かず、3割近くが無解答だった問題もあったそうで、記述が苦手だということがわかりました。
この調査とは別に、「経年変化分析調査」(2024年度)の結果が7月31日に、公表されました。これは子供の学力の変化を見るために、3年ごとに抽出(小6は約3万人、中3は約7万人)で行うものなのですが、問題は毎年ほぼ同じ(非公表)です。なんと、前回(2021年度)よりも全教科(小6は国語と算数、中3は国語と数学と英語)で成績が下がったそうです。
なぜ学力が下がったのか、その理由を考えてみました。
◎保護者の変化
2024年度の保護者への調査によると、「学校生活が楽しければ、良い成績にはこだわらない」と答えた人の割合が増加したそうです。必死に勉強させて難関大学に進まなくても、推薦で受験勉強を回避して青春を謳歌し、行ける大学に入り、ほどほどの人生を送ればよい……。「勉強しなさい」と子供に厳しく言っていたら、子供と仲良くしていられませんよね。子供の嫌がることを言わない仲良し親子でいようと思ったら、ゲーム無制限で、スマホに触れる時間が増加。子供が睡眠不足で授業中にぼんやりしている…ということも起こります。
ただし、この保護者の変化は、悪いことだとは言い切れないですよね。子供にとっては幸せなのかも。
◎子供の変化
保護者が熱心で、塾に通ったりして勉強を頑張っている従順な子供もいます。
その一方で、そんなに頑張らないで、楽に過ごすことを選ぶ子供もいます。昔と違って、何事も無理強いされない世の中です。部活は楽しむ感覚で。嫌なことはしない。目立つことや競争を避けるため、できないふりをする子供もいる。子供にとってはこのほうが幸せかもしれませんよね。つまり、ウェルビーイングの方向に進んでいます。
◎授業の変化
詰め込み教育はダメ、ということで、この10年ぐらいは、暗記させない、覚えることを強制しない方向で、その場で考える授業を重視してきたわけです。昔だったら、「掛け算九九の6の段を覚えないと帰れません」なんてこともありましたが、今はそういうのもないですから。授業中に、班ごとに話し合いをして分数の割り算の考え方を理解できたとしても、ひっくり返してかける、というテクニックが身に付いてないと、ぺーパーテストの点数は上がりませんよね。点数をあげようとしたら、つまらないことをやらせる、覚えさせることは必要なのかもしれません。しかも、先生たちは多忙であり、特に若手の先生たちはおもしろい授業を構想する時間がないのです。経験が少ないので、指導書に従って教科書を流すような無難な授業になりがちであり、子供にとっては勉強がつまらない→勉強が嫌いになってもおかしくありません。
→先生たちには余裕の時間が必要です。
◎非認知能力(主体性とか粘り強さなど)と認知能力(テストの数値)
本当は両方大事なのだと思います。文科省は、学力の高さをキープすることを前提として、非認知能力を育成せよと、言っていたのだと思いますが、実際は、目に見えるほうの認知能力が軽視されてしまったのではないでしょうか。主体性がある子はいいと思います。自分でどんどん勉強するでしょう。でも、強制されてやっと身に付く子供もいます。昔はそうやって学力の底上げをしてきたわけですが、主体性を育もうとした結果、「主体性を持てず強制されないと勉強しない子供たち」は置いていかれてしまったのではないでしょうか。
◎フィンランド教育の影響
一時期、日本の先生たちがこぞってフィンランドに視察に行き、日本はフィンランドの教育にならい、主体性など非認知能力の向上を進めたわけです。しかし、フィンランドはPISA調査の点数か低下しました。主体性のある子供は伸びるけれど、主体性のない子供は脱落していくそうで、日本ではかつてのフィンランドと同じようなことが起きています、とYouTubeなどで話題になっていますよね。かといって、単純に紙に戻ればいいんでしょうか?? そういう問題ではない気が……。海外の例も参考にしつつ、今の時代にふさわしい日本独自のやり方を探していかないと…。
文科省は非認知能力と認知能力をバランスよく育みたかったのでしょうが、現実はそうはならず、2極化が進み、従順に勉強を頑張る子供たちと、無理せずぬくぬく幸せに過ごす子供たちがいるようです。子供が幸せな気持ちで過ごすのは、悪いことではないと思いますが……(幸せにもいろいろありますのでね)。
ただ、国際的な競争力を高めるために、もっと学力を向上させたいのだとしたら……今後は子どもの幸せと学力向上を両立しないといけないわけで、そうすると……昔からのペーパーテストを絶対視するのは違う気がします。学力が下がったけど、〇〇の数値は向上しました、みたいな、何か違う指標が必要なのではないかと思います。