日本の教育を考える

日本の教育が少しでも良い方向に進化していってほしいなと願いつつ、感じたことを書いてみます。

不登校児童生徒の増加と「頑張りすぎてしまう」人々

本日のテーマは、不登校です。

令和3年10月13日に文科省が公表した「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」を見てみますと、小・中学校の不登校児童生徒数は196,127人(前年度181,272人)であり、前年度から14,855人(8.2%)増加しました。小中学校共に不登校児童生徒数は増加傾向が続いていて、8年連続で増加したそうです。

小学校・中学校ともに不登校児童生徒数の割合も増加しています。小学校は平成27年度は0.4%→ 令和2年度は1.0%へ、中学校は平成27年度は2.8%でしたが、令和2年度はなんと、4.1%です。中学校は100人に4人です。

この場合の、不登校児童生徒とは、年度間に30日以上登校しなかった児童生徒のことを指します。その中には「新型コロナウイルスの感染回避」を理由とした長期欠席をした者も含まれています。「新型コロナウイルスの感染回避」のために30日以上登校しなかった児童生徒数は、小学校14,238人、中学校6,667人です。

 

先日、ある中学校の校長先生と話をしました。

その学校では、基本的に、子どもの「できないこと」を指導するのはやめて、それぞれの子どもの良いところ見つけて「ほめる」指導をしています。例えば、遅刻しても怒りません。先生は「頑張って、よく来てくれたね」と言って迎えるのです。

生徒の自治的な活動を尊重するために、先生があれこれ命令することもやめました。行事の運営は生徒に任せています。例えば、体育大会であれば、競技種目を自分たちで決めるところから始めて、生徒たちは当事者意識を持って取り組みます。

 

このように、何事も「管理的」で規則だらけだった昔に比べると、個性を尊重する良い学校になっています。

それでも、不登校は減らないそうです。

何事も積極的に頑張っているように見えた子が、突然、来なくなったりするとか。校長先生も、原因はわからないと言っていました。

 

ここからは、あくまでも私の意見です。

私が思うに、自治的組織になると、「つらい子」がでてくるんじゃないかと思うのです。先生に命令されて動いていたときは、「やりなさい」と言われたことだけを、みんなが同じようにやればよかったわけです。ある意味、それだけやっていれば、安心できたのです。みんな同じだから。

しかし、自治的組織になると、命令がなくなりますので、子どもが考えて自主的に動いていくことになります。つまり、「ここまで」という制限がなくなります。

 

「自分には、これはできるけど、これはできない」と、ちゃんとバランスをとれればいいんですけど、自分の存在意義を周囲に示すために、もっと、もっとと、やりすぎてしまう子、過剰に頑張ってしまう子がでてくるのではないかと思うのです。その結果、疲れ切ってしまい、もう無理……と。

中には、過剰に頑張っても全然平気な子もいて、こういう子どもはそもそもキャパシティが違うわけですが、そんなことは中学生にはわからないので、自分も負けないように頑張ったところ、体が悲鳴をあげてしまった……、ということもあるのではないでしょうか。

 

なぜこんなことを思うのかというと、私の周りにも「過剰に頑張ってしまう人」が何人かいたからです。

例えば、Aさんは、ある趣味の会の雑用を、なんでも引き受けていました。たいていの人は役員を1年やったら、数年間はやらないのですが、Aさんは毎年のようにやっていました。頼まれたらNoと言わず、楽しそうにやっているので、みんなから「いい人」だと絶賛されていました。Aさんは亡くなってしまいましたが……。

 

頑張りすぎてしまう人たちに共通しているのは、「やりすぎている」と、気づいていないことです。健康を害するまで、気づかないことがあります。そして、その根っこには、「頑張ることで、みんなに愛されたい」という思いがあるような気がします。

学校の場合は、「みんなの役に立ちたい」「頑張りたい」という純粋な思いがあって、「みんなに期待されたい」し、「期待に応えたい」のではないかと思います。

 

今後、全国の中学校が、自治的な組織に変わっていくのは大歓迎です。

ただ、生徒が自治的に、主体的に活動している学校でも、先生たちは、生徒たちの様子をよく見ていていただきたいなと思います。

もちろん、子どもが不登校になってしまう理由にはいろいろあります。理由は、子どもによって違うと思いますが、もしも「頑張りすぎている」ように見える生徒がいたら……「頑張るあなたは好きだけど、頑張っていてもいなくても、あなたのことが好きだよ」というようなメッセージを、伝えてあげる必要があるのではないかなと思います。