財務省はなぜ教員を削減しろというのか。
学校現場では、「教員の数をもっと増やしてほしい」とみんな思っています。
40人のクラスよりも、30人のクラスの方が、先生の目が届きやすいに決まってるじゃないですか。勉強にも良い効果がありそうですよね。先生にとっては、テストの〇つけでも成績表を書くのでも、少人数のほうがひとつひとつを丁寧にできそうですよね。
だから、もっと教員の数を増やして、少人数学級にしたほうがいいと思うわけです。
でも、財務省は毎年「教員を削減しろ」と言います。
不思議だと思いませんか。
私はある大学教授に聞いてみたのです。
「なぜ財務省は教員を削減しろ、なんて言うんですか」と。
その教授いわく、「少人数学級の方が子どもの成績がよくなる、とデータで示せなかったから」だそうです。
単純に、全国学力・学習状況調査の点数と、クラスの規模の関係を見てみると、まったく逆の結果が出るんだそうです。
それはなぜかといいますと、
レベルの高い学校には、優秀な子どもが多く集まるからです。
例えば、東京都の某区では、中学校は学校選択制です。
子どもは区内で行きたい学校を選べるわけですね。そうすると、成績の優秀な子どもは区の中心にある、レベルの高い、高校進学に有利な学校に殺到します。だから、抽選が行われます。
そんなに勉強熱心でない子どもは、区の周辺部にある、自宅近くの中学校に通うことになり、こちらは定員割れが起きています。
つまりですね、中心部にあるマンモス校の40人学級の子どもたちのほうが、周辺部の少人数学級の子どもたちより、圧倒的に成績はいいわけです。
これだけみたら、「教員、そんなにいらないじゃん。40人学級でいいじゃん」という話になりますよね。
ただし、これは子どもの家庭環境を考慮していませんからね。
昨日も書きましたが、家庭の所得が高くて両親が高学歴の家に育った子どもは、学校がたいしたことを教えなくたって成績がいいわけです。塾のおかげで。
だから、家庭の所得が低くて両親が低学歴の家に育った子どもと、分けて考えないといけないわけです。
むしろ、こちらの不利な環境の子どもたちが40人学級にいる場合と、少人数学級にいる場合で、どちらのほうが成績が良くなるのか、それが大事でしょう。
教授に、「不利な環境の子どもの点数と、クラスの規模の関係を示すデータはないんですか?」と聞くと、な、なんと、「今までなかった」そうです。
なんたって、全国学力・学習状況調査とリンクさせる形で保護者調査をしたのは、平成25年が初めてです。
それ以前は、なんとなく金持ちの家の子のほうが成績がいいのかも~とみんな思っているだけで、国レベルでのちゃんとしたデータはなかったそうなんです。
そこで、また疑問が。
文科省はなぜこれまで保護者調査をしなかったんでしょう。
教授いわく、「保護者調査はものすごく手間がかかり、学校が大変だというのがひとつ、それと、文科省の担当者がころころ変わるから」だそうです。
確かに、保護者に協力してもらうのは大変そうですが……。
文科省の学力調査の担当者が数年で変わるため、単年度の事業はできても、新しく何かを始めるには時間がないんだそうです。保護者の調査をしなくちゃな~と思ってはいても、そのうちに担当者がチェンジしてしまうと。
もう、びっくりですね~。
でも、皆様、ご安心ください。
保護者調査も定期的に行われることに決まりまして、平成29年度は実施されました。
財務省に「教員を増やせ」と訴えるための、根拠になるようなデータがとれるといいんですけどね……。
結果は8月にわかるはずです。