先日、イタリアで暮らしていたことがある、という人から話を聞く機会がありまして、ちょっと興味深いことを聞きました。
その方いわく、「イタリアでは、きゅうりは量り売りなのよ。大きいのも小さいのも曲がってるのも、どんと売場に置かれていて、自分の好きなのを選んで買うの。一人暮らしとかで、少しだけ食べたい人は小さいのを選んだりするのよ」と。
現地の人たちは、見た目よりも、残留農薬のほうを気にするそうです。だから、まっすぐでなくてもあまり気にしないで買っていくんだそうです。
日本のスーパーのきゅうりは、というと、まっすぐで、長さがそろったものがきれいに袋づめされています。
それ以外のもの……基準よりも短かったり、細かったり、曲がっていたりするものは売場には出てきません。それは、商品価値が低いということを意味します。
それが当たり前になっていて、誰も疑問を感じていませんけど、「こうじゃなきゃいけない」の基準がこの国は厳しいってことだと思います。
しかも、「こうじゃなきゃダメ」の刷り込みが、スーパーのような日常的な場面で幼少期から行われているということです。
多様性が大事と、みんな頭ではわかっているけれど、実際にスーパーへ行ったら、形のいいのを選んでしまうわけで。
もしも親が子どもに「きゅうりを買ってきて」と頼んだとして、子どもが曲がったきゅうりを買って帰ってきたら、親は「こんな曲がったの買ってこないでよ」というに違いありません。
これはつまり、多様性を社会が認めていないってことではないでしょうか。
「たかがきゅうりのことで大げさだ」といわれるかもしれませんが、日本のスーパーでも野菜の量り売りをしたらどうでしょうか。
長い時間がかかることですが、そういう意識から変えていかないと、多様性を生かした社会の実現は難しいんじゃないかと思いますし、誰かを仲間はずれにする子どもたちを、責められないような気がします。