日本の教育を考える

日本の教育が少しでも良い方向に進化していってほしいなと願いつつ、感じたことを書いてみます。

学校のオンライン授業 問題は通信回線

新型コロナウイルスの感染状況が厳しい中で、多くの小中学校は新学期を迎えました。

 

まずは、先生ではない方々に、知っておいていただきたいことです。

ご存じのように、GIGAスクール構想によって、全国のほとんどの小中学校の子どもに一人一台の端末が配備されました。感染拡大を防ぐために、子ども全員が登校する形ではなくて、分散登校にして、クラスの半分の子どもは教室で授業を受け、残りの半分は授業をオンラインで家から見られるようにすればいいじゃないか、と思う方もいると思います。

確かにそれができる学校もあるのでしょう。ですが、ごく一部です。

そうはいかないのが、学校というところです。

理由は、決して、先生たちが無能だから、ではありません。

原因の一つは通信回線です。

 

回線が脆弱なのです。

例えば、どんな感じかといいますと、

校内であっても、35人のクラスがあったとしたら、クラス全員の子どもが一斉につなぐのはまず無理で、誰かが落ちちゃうわけです。全校の子どもが同じ時間につなぐなんてことは、到底できないわけです。ひどいときは、2~3人でもつなげなくなるようです。

クラウドでドリル教材をやろうと思っても、インターネットの渋滞でつなげないそうです。

世間の、企業の人たちが会議をやる時間帯は、インターネットが渋滞してつなげない、とも言われています。

 学校と家をつなぎたくても、つなげるときと、つなげないときがあります。つなげたとしても、常に切れる心配をしないといけないわけですから、これは先生にとっても、子どもにとっても非常にストレスです。うんざりしますよね。

(逆に、家の回線が弱いというケースもあるのではないかと思いますが、まずは学校なので、学校の回線が弱い話にしぼります。)

 

当然、「なんでこんな使えない物を学校に入れたんだ」という話になります。

GIGAスクール構想では、端末の代金を負担するのは国ですが、回線を引く費用は、自治体の負担です。どういう工事をするのか、判断するのは自治体であり、つまり、教育委員会の担当者です。

うまくいかなかった原因は、だいたいこんな感じじゃないかと、今までに複数の関係者から聞いた話を元に、勝手に推測してみました。

自治体が回線の費用をケチった場合もあります。議会で予算が承認されないといけないですからね。議会が「ICTなんて学校にはいらない」と考えているおじいさん議員ばかりですと、そうなる可能性はありますよね。

教育長さんの考え方次第、というところもあります。GIGAスクール構想はベテラン教員には不評です。仕事のやり方が大きく変わり、ベテランが若手から教えてもらわなくてはならないからです。先生というのは、人に物を教えるのは好きですが、「人の話を聴くことは嫌い」な人が多いようです。ベテラン代表みたいな発想をしている教育長さんだと、回線のことなんか気にしていないかもしれません。だから、何も指示を出さないわけです。

子どもの未来にとって何が大事なのかを理解している教育長さんは、どこにお金をかけるべきなのかがわかっていますから、的確な指示をしてくださいますが、ICTに興味がない方の場合は、のような、よくわかってない担当者に任せきりになるわけです。

市の教育委員会の担当者がITに詳しくなくて、どんな使い方をするのかの見通しが甘かった可能性があります。ITのことがよくわかってないので、業者が出してきた提案と見積もりを見て費用が高いか、安いか、という基準で判断し、使いにくいものになっちゃったと、そういうことが考えられます。

市の教育委員会の担当者がITのことが全然わからなくて、業者もITのことがよくわからなくて変な具合になっている、というケースもありそうです。(例えば、昔から学校に出入りしている、紙の教材会社に発注したケースもあるそうで、何をすればいいのかその業者もよくわかっていない状態で、そこからさらに地域の電気屋さんに工事を発注したりするんだそうです。)

あくまでも、勝手な推測ですが……。

 

ここからは、先生方にぜひ、お伝えしたいことです。

ここであきらめてはいけないと思うのです。

1人1台の端末の活用は、まだ始まったばかりです。

何か新しいことを始めたとき、最初から、すべてがうまくいくわけではないでしょう。

不具合が見つかったら、少しずつ修正していけばいいのです。

あのICT先進地域として知られる戸田市の小学校でも、「3クラスに1クラス分」のときはうまくいってましたが、1人1台になったので、確か昨年度だったか、回線の補強工事をしたと言っていましたよ。

今、必要なのは、回線の補強工事です。

 

の場合は、先生たちが声を上げていくしかないと思います。このままの状態で、だましだまし、画面共有をしないとか、つなぐ人数を制限するとか、使う時間帯をずらすとか、負荷を軽くする裏ワザを駆使してなんとか持ちこたえる……ことは可能なのかもしれませんが、根本の解決にならないばかりか、「今のままで、できるならそれでいいじゃないか」と思われて、放置されてしまいます。根本の問題である回線の補強工事をしてもらうように、教育委員会へ、地元の議員さんへ、教育長へ、保護者も巻き込んで訴えていく必要があるように思います。

先生たちの世界は「出る杭は打たれる」ので、今迄ずっと、おとなしくなさっておられたと思うのですが、そういうのはそろそろやめたほうがいいのではないでしょうか。職員室で愚痴を言い合っていても、事態は何も変わらないからです。むしろ、従順に、耐え忍んでいると、時代から取り残されますし、「教員は無能だ」と誤解され、状況は一層厳しくなるばかりです。必要なことは、先生たちの声を集めて、きちんと要求していかないと……そんなふうに思います。

もしも今後、コロナで学級閉鎖、学校閉鎖になったり、あるいは、自然災害で授業ができなくなったとき、隣の町では子どもが一人一台を駆使してオンラインでスイスイ授業を進めていくのに、うちの町では授業ができないので、ひたすら家で紙のドリルをやってますと、そういうことが起こってくるでしょう。これが続くとどんどん差が付きますよと、保護者にも訴えていってみてはどうでしょう。

については、教育委員会の担当者は詳しくなくても、どこの市、あるいは町にも、ICTに詳しい先生方が必ずいるものです。間違いなく。市内の詳しい先生たちがつながって委員会をつくり、教育委員会の担当者を批判するのではなくて、こういうのが必要なんですと、提案してみてはどうでしょうか。

愛知県の春日井市では、そういう感じで進めていますよ。だから、現場にとって使いやすいものになっています。

また、近隣にGIGAスクール構想を、きちんと進めている市や町があるのなら、そこに教えてもらったり相談したりして真似をする、という方法もあります。「各市や町が、自分たちで、すべてのことをイチから考えなくてもいいんですよ」と某大学教授もおっしゃっていました。もっと使いやすくするために、近隣の地域に相談してみるという選択肢もあると、教育委員会の担当者に提案してみてはいかがでしょうか。

某大学教授によりますと、本当は、人材不足などで、自分たちで考えるのが難しい自治体をまとめる役割を、県教委に担ってもらい、共同で発注などを行ってほしいところだったそうですが、そういう役割を果たしている県は少ないそうです。

 

そんなわけで、今、「回線はどうにもならない」と悲観的になっている先生たちが多いことと思いますが、先生たちにできることはあります。

使いにくい物を我慢して使い続けるのではなく、どこをどう変えてほしいのか、きちんと発言して、使いやすいものに少しずつ変えていった方がいいと思うのです。そのために勇気を出して、何らかの行動を起こしてみてはいかがですか。

なんたって学校や教育委員会という組織は、何十年もの間、がっちり固まってきましたからね。そこに新しい風を吹き込むのには、手間がかかると思います。一度言ったぐらいでは全然相手にされないかもしれません。それでもあきらめずに、改善に取り組んでみてくださいね。

回線の補強工事が実現することを祈っております!